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魅惑のハーピスト=メアリー・ラティモアが紡ぐ、“マジカルでファンタスティック”な音世界(Album Review)

 マジカルでファンタスティック。このアルバムを一言で表現すると、まさにそんなイメージだ。ハープというと、誰もが知っている楽器でありながら、実際にはほとんどの人がどういう楽器なのかをよく理解していない。もし、ある程度知識があったとして、本作を聴くとまたがらりと印象が変わるだろう。米国フィラデルフィア出身のメアリー・ラティモアによる『アット・ザ・ダム』は、そんなリスナーの耳を優しく、そして鋭く刺激してくれるユニークな作品である。


 メアリーは、クラシックの素養はあるが、狭いジャンルにとらわれずに活動する女性ハーピスト。サーストン・ムーア、シャロン・ヴァン・エッテン、カート・ヴァイル、ジャーヴィス・コッカーと、彼女がこれまでに共演したアーティストを羅列するだけでも、その特異性が伝わるだろう。その理由は、アルバムを聴いてみればさらに明白だ。一部の楽曲でギターが入っているが、基本的にはハープのみの独奏によるインスト・ナンバーを収めている。しかし、どの曲を聴いても、とてもハープだけで作られたとは思えないほど、鮮やかでドラマティックなのだ。


 彼女はただ単にハープを爪弾くだけでなはない。ディレイや逆回転といったエフェクトを駆使しながら、独特の音像を生み出していく。もちろん、古来からの竪琴のイメージ通り、ドリーミーなアルペジオを華麗に披露することもあるが、それ以上に音響的で実験的な奏法を効果的に使って聴く者を未知の世界へと引き摺り込んだりもする。そしてどの楽曲も、映像が脳裏に浮かび上がるくらい色彩感に富んでいるのだ。先述した名だたるアーティストたちが彼女を起用するのも、その効果を求めてのことだろう。


 アンビエント、ヒーリング、ポスト・ロック、現代音楽、etc。いずれの要素も持っており、そのどれでもないという不思議な音楽。メアリー・ラティモアが紡ぐ美しい音色に包まれながら、迷宮のような世界に踏み入れてみてはいかがだろうか。


Text:栗本 斉


◎リリース情報
『アット・ザ・ダム』
メアリー・ラティモア
2016/05/18 RELEASE
2,160円(tax incl.)

Billboard JAPAN|Daily News 2016年5月15日 12:00:00 更新

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